戸田和代『きつねのでんわボックス』

​『きつねのでんわボックス』との最初の出会いは、長女が受講している「ドラゼミ※」の、国語の文章問題でした。(※「ドラゼミ」は2019年3月でサービス終了となり、別の通信教育が始まります。)

文章問題に取り上げられた作品はこれまでも、「全部読みたい。最後まで読みたい。」というリクエストを受けて、買ったり借りたりすることがありましたけれど、そんな本たちの中でも、『きつねのでんわボックス』は別格の輝きがあります。

ストーリーだけでなく、こどもの手のあたたかさや、やわらかさが伝わってくる、たくみな表現が本当にすばらしいです。


きつねのでんわボックス (新・ともだちぶんこ) [ 戸田和代 ]

とある電話ボックスに、毎日電話をかけに来る男の子がいます。

その男の子を見るために、毎日山から下りてくるきつねがいます。

きつねはこどもをなくした母親で、人間の子に自分の子を重ねているのです。

夫が亡くなったときは「ぼうやがいるからかなしくありませんでした」という、ちょっと薄情なきつねですが、ぼうやが亡くなったときは、泣いて、泣いて、なみだでからだがとけてしまうほど悲しみます。想像しただけで、つらい。

長女は「きつねのぼうや、はっちゃんみたいだね。こんなのがいなくなったら、かなしいよね。」と言いました。ほんとそう。あなたも、ちっちゃいころはこうだったよ。「みて、みて、すごい?」っていつも言ってたよ。

男の子が遠くへ引っ越すため、もう電話ボックスには来ないことを知って、悲しみに追い打ちがかかってしまったきつねは「行かないで。わたしはこれからどうすれば」と取り乱しますが、やがて男の子の幸せを願う気持ちに変わっていきます。

深い悲しみから、それでも前を向いて生きていこうとするきつねの姿が胸を打つ名作です。

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